おぶなより

世界平和の祈りに寄せて

153_原仏8ー3

152_原仏8ー2 の続きです。

二 誕生 のアシタ仙人の話からです。

アシタ仙人は、赤ん坊の釈迦を抱きかかえて、今で言えば手相や人相でしょうか、その特徴から、彼がただならぬ者であり、素晴らしい悟りを得ていずれは多くの人々に教えを説き、導く聖者であることを読みとって歓喜したが、自らは彼(釈迦)が成長して教えを説くまで生きていられないことを嘆き、落涙することが出ています。

そして、自分は生きて教えを受けることは叶わないが、甥のナーラカに、将来、釈迦に帰依するようにすすめる話が出ています。

以下の通りです。

カンハシリ〈アシタ〉という結髪の仙人は、こころ喜び、嬉しくなって、その児を抱きかかえた。 ー その児は頭の上に白い傘をかざされて白色がかった毛布の中にいて、黄金の飾りのようであった。
(この仙人)、相好と呪文(ヴェーダ)に通暁しているかれは、シャカ族の牡牛(のような立派な児)を抱きとって、特相(特徴)を検(しら)べたが、心に歓喜して声をあげた。 ー 「これは無上の方です。人間のうちで最上の方です。」
ときに仙人は自分の行く末を憶って、ふさぎこみ、涙を流した。仙人が泣くのを見て、シャカ族の人々は言った。 ー
「われらの王子に障りがあるのでしょうか?」
シャカ族の人々が憂えているのを見て、仙人は言った。 ー
「わたくしは、王子に不吉の相があるのを思い続けているのではありません。またかれに障りはないでしょう。この方は凡庸ではありません。よく注意してあげて下さい。
この王子さまは最高のさとりに達するでしょう。この方は最上の清浄を見、多くの人々のためをはかり、あわれむが故に、法輪をまわすでしょう。この方の清らかな行いはひろく弘まるでしょう。」(注1)

(六八九ー六九三)

清浄は清らかな境地で、法輪をまわす、は教えを説くことです。

「ところが、この世における私の余命はいくばくもありません。(この方がさとりを開かれるまえに)中途でわたくしは死んでしまうでしょう。わたくしは比なき力ある方の教えを聞かないでしょう。だから、わたくしは、悩み、悲嘆し、苦しんでいるのです。」
かの清らかな修行者(アシタ仙人)はシャカ族の人々に大きな喜びを起こさせて、宮廷から去っていった。かれは自分の甥(ナーラカ)をあわれんで、比なき力ある人(ブッダ)の教えに従うようにすすめた。 ー
「もしもお前が後に「目ざめた人あり、さとりを開いて、真理の道を歩む」という声を聞くならば、そのときそこへ行ってかれの教えをたずね、その師のもとで清らかな行いを行え。」
その聖者は、人のためをはかる心あり、未来における最上の清らかな境地を予見していた。
その聖者に教えられて、かねて諸々の善根を積んでいたナーラカは、勝利者ブッダ)を待望しつつ、みずからの感官をつつしみまもって暮らしていた。
〈すぐれた勝利者が法輪を回したもう〉との噂を聞き、アシタという(仙人)の教えのとおりになったときに、出かけていって、最上の人である仙人(ブッダ)に会って信仰の心を起こし、いみじき聖者に最上の聖者の境地をたずねた。(注2)

(六九四ー六九八)

聖者の境地は、主に出家修行者のためので、内容は以下の通りです。

〈ナーラカは尊師にいった〉、「アシタの告げたこの言葉はそのとおりであるということを了解しました。故に、ゴータマよ、一切の道理の通達者(ブッダ)であるあなたにおたずねします。
わたくしは出家の身となり、托鉢の行を実践しようと願っているのですが、おたずねします。聖者よ、聖者の境地、最上の境地を説いてください。」
師(ブッダ)はいわれた、「わたくしはあなたに聖者の境地を教えてあげよう。これは行いがたく、成就し難いものである。さあ、それをあなたに説いてあげよう。
しっかりとして、堅固であれ。
村にあっては、罵られても、敬礼されても、平然とした態度で臨め。(罵られても)こころに怒らないように注意し、(敬礼されても)冷静に、高ぶらずにふるまえ。
たとい園林のうちにあっても、火炎の燃え立つように種々のものが現れ出てくる。
婦女は聖者を誘惑する。婦女をしてかれを誘惑させるな。
婬欲のことがらを離れ、さまざまの愛欲をすてて、弱いものでも、強いものでも、諸々の生きものに対して、敵対することもなく、愛著することもない。
「かれらもわたくしと同様であり、わたくしもかれらと同様である」と思って、わが身に引きくらべて、(生きものを)殺してはならぬ。また、他人をして殺させてはならぬ。
凡夫は欲望と貪りとに執著しているが、眼(まなこ)ある人はそれを捨てて道を歩め。この(世の)地獄を超えよ。
腹を減らして、食物を節し、小欲であって、貪ることなかれ。かれは貪り食う欲望に厭きて、無欲であり、安らぎに帰している。」(注3)

(六九九ー七〇七)

~~~~~

(注1)結髪~けっぱつ~髪を結うこと。また、結った髪。

相好~そうごう~人の顔かたち。顔つき。表情。

通暁~つうぎょう~非常に詳しく知りぬいていること。

障り~さわり~①さしつかえ。都合の悪いこと。②さまたげ。じゃま。

凡庸~ぼんよう~すぐれた点がないこと。また、そのさま。平凡。また、その人。凡人。

(注2)善根~ぜんこん~よい果報をもたらすよい行い。善業(ぜんごう)。

感官~かんかん~外界からの刺激を受ける器官と、これを神経系に伝え知覚させる器官。感覚器官。

(注3)托鉢~たくはつ~僧が修行のために鉢(はち)を持って家々を回り、米や銭の喜捨を受けること。

喜捨~きしゃ~喜んで寺社や僧に財物を寄進し、また、貧者に施すこと。

聖者~せいじゃ~聖人。偉大な信仰者。

堅固~けんご~①守りがしっかりしていて、簡単には破られたりしないこと。また、そのさま。
②意志が強く、心が動かないさま。
③健康で丈夫であるさま。

婬欲~いんよく~異性の肉体を求める情欲。色欲。

愛著~あいじゃく~愛着の古い言い方。元は仏教で欲望に執着する意。

愛着~あいちゃく~その物事に心がひかれ、離れがたく思うこと。また、その気持ち。

愛着~あいじゃく~仏教語~欲望にとらわれて人や物に執着すること。また、男女の愛に執着すること。愛執(あいしゅう)。

執著~しゅうじゃく~仏教語~執着のこと。深く思い込む。物事に強く心がひかれる。

厭きる~あきる~飽きると同じ。

最上の境地を、浄土門風、五井先生の現代風に読み替えると、こんな感じでしょうか。

とにかく、神様を信じよ。

といっても、過去世からの様々の因縁があり、肉体人間観も根強いので、祈りを根本にして、神様(浄土門なら阿弥陀如来様)におすがりせよ。

罵られても、過去世の悪い因縁の現界での時を経て消えてゆく姿、怒りそうになったら祈りに入れよ。

敬礼されても、過去世のよき因縁の現界での時を経て消えてゆく姿、高ぶりそうになったら祈りに入れよ。

よきことも、悪しきことも、全部、過去世の因縁の現界で時を経て消えてゆく姿、神様ありがとうございます、と感謝できるように、少しずつ段階を踏んで精進せよ。

たとえ、一時的に静かな境遇にあっても、過去世からの因縁は、次々に現界たるこの世にあらわれてくる。

悟りを得るに遠いほど悪しき因縁の深い女性は、聖者さえも誘惑する。誘惑はあくまでも消えてゆく姿である。

突き放すだけである。

付与された動物的な本能ばかりにかかずらわらないようにせよ。

強きものでも、弱きものでも、生き物はすべて神様のあらわしたもの。

私達肉体人間を含め、みんな神様のあらわしたもの。

本来なら、お互いに認め合い、愛し合い、慈しみ合い、敵対することもなければ、執着しすぎることもない。

愛を持って、ふんわりとしていればいい。

思いが乱れそうになったら、祈りをもって、神様に入ってお任せする。

いかなる生きものも、わが身にひき比べて、痛めたり、殺したりしてはならない。

皆、神様のあらわしたものだから、感謝とともに尊重し合うのが、私達のあるべき姿。

人様を惑わせて、他のいかなる生きものも、痛めつけるように仕向けたり、殺すように仕向けたりしてはならない。

ごく普通の人は、基本的に過去世の因縁の清算のためにこの世に来ているから、悟りには遠いのが一般的なので、どうしても、五感にまつわる、各種の欲望、財欲、金欲、肉欲に執着しやすい。

しかし、少しでも神のみ心に沿ったよき生き方をしたければ、これらを認識して、こだわらないようにと、気持ちにとどめよう。

この、過去世からの真善美に悖る業想念の渦にまみれた、この世の激しい流れの海を乗りきろう。

そうするように、祈りと感謝行を根本に、段階を踏んで精進していこう。

食べ物なら、植物も、動物も、すべて神様の命を頂いて生きていたもの。

それが、肉体人間の身体の生命活動のために身を捧げてくれている。

ありがたいことなのだから、決して肉体を維持する必要限度以上を貪り過ぎないようにして、感謝とともに頂こう。

私達の生命維持活動のために犠牲になってくれているのだから、欲をかきすぎないように心がけよう。

そうすることが、最終的には安らかな心に繋がっていき、ほんのわずかでも、悟りに近づいていくことになるのだから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

①追記: 2020/11/01 11:38 〜訂正内容〜全体にわたり、加筆・訂正をしました。

②追記: 2020/12/03 01:05 〜訂正内容〜
以下の各語句の意味を追加しました。
なお、愛著と執著については、私の不注意により、意味を書けないでおりました。大変失礼致しました。申し訳ございません。
・愛著(あいじゃく)
・愛着(あいちゃく)
・愛着(あいじゃく)
・執著(しゅうじゃく)