45 智慧があるとは心になにもないこと
無知な人には精神の安定統一はありえない。
精神を安定統一しなければ、
智慧はあらわれない。
精神の安定統一と智慧の備わっている人は、
涅槃に近づく。
(三七二) (第25章 出家修行者(比丘) より)
また、以下、一通り S さんのお話を見ていきます(かなりの要約・追加・意訳・改変などあり。お釈迦様も敬称を省き釈迦とする。ご了承下さい)。
人はいつも混乱して感情にふりまわされている(そうだ)。好きだから飛び込み、嫌だから逃げ、怒れば攻撃するという生き方(だそうだ)。それは理性のない危険な状態だ(そうだ)。
子供は嫌だといって泣きわめき、欲しいといっては泣きわめいて、親の言うことを聞かない。では、大人になってそれを止めたかというと、そうではない。相変わらず、子供時代と同じように感情に支配されている。だから、総合的にみて、人生はうまくいっていないのだ。
何をするにしても大事なことは、精神的に落ち着くことだ。精神が安定すると、物事を明晰(めいせき)に見ることができる。感情に振り回されないから、正しく理性的な行動ができるようになるのだ。
若い人が、ゲームやギャンブルなどに熱中して、遊び呆(ほう)けていれば、お先真っ暗な人生を歩むことになるだろう(?)。しかし、理性にもとづき考えれば、きちんと仕事をすべきことがわかってくる。感情がたかぶっても、理性でこれを抑えれば、将来の見込みは立つ訳だ。
精神的に安定すると智慧と知識も備わってくる。知識とは概念を理解して頭に入れることだ(そうだ)。けれども、時には知識が危険をもたらす場合がある。知識が発達して、科学技術が進歩したのはいいが、核兵器が作られてしまった。ひとたび、核を使えば地球は終わりなのに、それでもまだまだ核兵器を作ろうとする。これは、明らかに愚かな行為なのだ。だから、知識だけでは、幸福の役に立たないのである。
知識がありすぎると、判断ができなくなる(そうだ)。何のことはない、無知で行動できない人と変わらないのだ。だから、きわめて難しい道を歩んでも、結局は元のスタートラインに逆戻りだ。両者の違いは、疲れているかどうかくらいしかない。
一般的には、勉強すれば頭がよくなると思われている。しかし、現代人は知識や情報を詰め込むだけだから、かえって頭が悪くなっている(?)。何のために知識や情報を蓄えるのか、を考えずに詰め込むからだ。そうして、結局のところ、何もわかっていない。だからといって、何も知らないとも言えない。頭の中には何の役にも立たない知識(?)が雑然としているだけ(?)なのに、「知っている」と思っているのだ。余計な知識のために、物事を明晰に見ることができなくなっているのに・・・・・。
智慧があるということは、明晰であるということだ。だからといって、特別に何かがあるということではない。実は特別に何もないということである。心の中に何の価値判断もないことなのである。
ある価値判断や、特定の主義などを強く持っていると、それに当てはまるものしか見えなくなる。
あるいは、何かの知識にしがみついていると、それで頭が一杯になり、他のものが見えず、頭に入らなくなってくる。
入ってくるものは受け入れる、しかし、それには執着せずに、持ち運ぶことはしない。 ー それが智慧があるということなのである。
そういう人には、こだわりがなく、従って、争うことがない。役に立つ知識は宝になるが、何の役にも立たない知識はゴミ(ひどい)である。とても高価な衣装でも、まったく使わなければゴミ同然(やっぱりひどい)だ。
世の中では、テレビや週刊誌などのマスメディアによって、興味本意の情報が垂れ流されている。それらは、欲望を煽り、不安を掻き立てるだけの無用な残飯(ひどい)だ。
やみくもに知識を詰め込むと、あまりにも余計なことを考えすぎてしまうので、妄想もふくらんでくる。
そのために、今やるべきことがおろそかになって、いつも不安と焦りで追い立てられているような生き方になってしまうのだ。
仏教では、「自らの役に立つものだけを学び、そうでないものはやめよ」と教えている。
人間にとって、最も大切な勉強は、自分の心をきちんと育てることだ。そのためには、無条件にすべての生命を愛する、と常に心の中にとどめておくことだ(無理ですね。そんな簡単にはいかない。段階があるから)。すると、どんな知識も素晴らしく役に立つのである。
それが智慧とともに、知識を得る方法なのである。
すべてのものは無常で、変化しないものはない(あるんじゃないですか?証明されていないけど)。そこがわかれば、自由になります。それが智慧の完成である。
とのこと。
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・明晰~めいせき~はっきりしていること。筋道が通っていること。また、そのさま。
(用例)頭脳明晰。明晰な論理。
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追記: 2021/05/04 10:35 〜訂正内容〜
本文を加筆・訂正し、注釈を追加しました。