おぶなより

世界平和の祈りに寄せて

479_仏言葉ー013 ー 信奉者の目指すべきもの

第 1 章 世間のルールになじめない

13.人生の財宝

今回は、スッタニパータ の経文になるのだが、これの特徴に関する今枝さんの文を再掲する(加筆・改変あり)。

ダンマパダ(漢訳では法句経)は、恐らく一人の編纂者が、様々なテクストから、ブッダ(=お釈迦さんのこと)が発見した真理の言葉(パーリ語で真理はダンマ、言葉はパダ)だけを取り出し、簡潔な偈(げ。詩の形)にまとめたもので、ブッダの心髄集といえる。

一方のスッタニ・パータは、個々に伝承されていた様々なテクスト(パーリ語でスッタ)を集めて(パーリ語でニパータ)、五部に分類したもので、後の膨大な三蔵のうちの経蔵の原形といってもいいだろう。

各スッタには、ブッダがどういう状況で、誰に対して、どういう教えを説いたかが、散文と詩を交えて簡潔に記されていて、物語性があり、読み物としても味わえる。

そこには、まさに、紀元前五世紀のインドで、多くの民衆にじかに接し、彼らの生活を導いた教師、苦しみを癒した医者としてのブッダの息吹きが感じられる。

(加筆)しかしながら、スッタニパータ には、同じテーマが何度も繰り返し述べられている箇所も多く、バラモン教からの批判に対する答え、出家修行者だけに課された厳しい戒律、また後から加えられたと思える煩瑣な哲学議論といった、現代の一般的な日本人にはほとんどかかわりのない部分もかなりの割合で述べられている。こうした箇所は、ブッダが重視した、一人一人の日常生活における心がけや実践からかけ離れている・・・以下略。

また、S さんによると、この経典では、蛇の脱皮が喩えとして使われていて、一般的な動物とはのように、それなりの体臭や汚れやノミとは無縁なところがあり、脱皮してきれいになるところに特色がありそうだ。

以下の経文は、今枝さんの本に訳がなかったので、ブッダのことば スッタニパータ 中村元岩波文庫 を用いている(この本も今枝さんの本のように、宝島社の佐々木さんの本とは違って引用云々の厳しい縛りがなかったため)。

なお、この経文は、第二の小なる章 の 六、理法にかなった行い の中にある。

理法にかなった行い、清らかな行い、これが最上の宝であると言う。
たとい在家から出て家なきに入り、出家の身となったとしても。

(二七四)

佐々木さんによると、これは仏教における善の二重構造について語ったものとされる。

すなわち、
在家においては、世俗で一般的に良いと思われる行いをすることであり、
他方、
出家修行者は、仏教の善を求めよ、
これらこそ人間が生きる上での最上の宝だとブッダは言っているものなのだそうだ。

当時の人としての生き方に関する、仏教礼賛のような経文に見えないこともないですね。

人としての良い行いをするという、人の生き方に対して、人々の悩みや問いに答え、癒しを与えて、数々の処方箋を示したのは、ブッダその人であったのだから。

多少は、他の宗教、特に、身分制度や祭祀にこだわるバラモン教に対する意識もあったのかもしれないですね。

そんな感じがします。

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追記: 2021/09/02 13:40 〜訂正内容〜

本文を訂正しました。