おぶなより

世界平和の祈りに寄せて

265_原仏17ー4

前回 ( 264_原仏17ー3 - おぶなより ) の続きです。

Ⅱ 人生の指針 の
第二部 後世における発展 の
第六章 アショーカ王のことばー 「岩石詔勅」の
アショーカ王のことば です。

なお、便宜上、本でなされている内容及び解説を、(A) と記します。また、私の文を (B) と記します(段落分けなどの改変あり)。
また、ここでも、本の小見出しに従って、見ていく形にします。

アショーカ王の悔恨 ー の続きです。

それは、カリンガ国が征服されたことについての神々に愛せられた温容ある王の悲嘆悔恨(ひたんかいこん)である。

何となれば、以前には征服されていなかった国を征服するならば、そこでは人々の殺戮(さつりく)、または死亡、または移送が起こる。それを神々に愛せられたる王はいたく苦痛と感じ、また苦悩と思うのである。

(A) (一部、改変・省略・訂正あり。以下、すべて同様)「ああ、戦争というものは、残酷なものだ。自分は悪いことをした」と悔いているのです。

(B) なし。

続きです。

しかし神々に愛せられたる王がそれよりもさらに苦悩を感ずることは、そこに住するバラモンあるいは修行者あるいは他の宗教の人々、あるいは在家者であって、彼らの間では、長者に対する柔順、恩師に対する柔順、朋友・知己(ちき)・同僚親族および奴僕(ぬぼく)・傭人(ようにん)に正しい取り扱いを行い、堅固(けんこ)な信仰をもつ人々が、その戦争の際に災害または殺戮を受け、あるいは愛する人々と別離したということである。

(A) そこには、立派な人達がいて、人間としての美徳を実践していました。それを、彼は詳しく述べています。

長者に対する柔順とは、年長者に対して柔順であることです。ことに年齢による敬意の払い具合は、インドでは非常に顕著であり、東アジアの漢民族朝鮮民族日本民族にも見られます。

インドと東アジアでは人種が違うのに、年長者に対する柔順という徳が強調されるのは、おそらく、古来から定住社会ができており、年長者の持つ経験が重宝され、それに対する報恩の気持ちが、人々の間に行き渡っているためでしょう。

母と父に対する柔順を、中国民族の間では孝の徳として説いています。わが国では、親孝行です。

インドでは、両親のことを母と父と言います。しかし、古い時代にインドに入ってきたアーリア人は、二人の父という言い方で両親を表現していました。それは、彼らの社会が家父長制(父が中心)であったからです。

ところが、インドの原住民の社会は、母系制でしたから、両親を言う場合に、母を先にあげ、母と父となるのです。

仏教もそうした影響を受けているのですが、仏典が漢訳されると、中国民族は家父長制のため、父母と順序を改めました。

恩師に対する柔順も、東洋の民族に見られることですが、西洋人にも見られます。私(←中村さんのこと)がアメリカで、ある学者を訪ねた時に、別の立派な学者が「あの先生によろしくお伝え下さい。あの方は私の先生で、このところご無沙汰をしているので、お詫びを伝えておいて下さい」と言うのです。その時、日本人と同じようなことを言うのだなあと感じました。

そして、しっかりとした信仰を持った、立派な人達がいたのに、彼らを殺(あや)めたりした。「悪いことをした」と彼は悔やんでいるのです。

最後の、愛する人々との別離というのは、日本でも戦争の時に痛感したことです。

(B) なし。

続きです。

そうして、たといか"自身は好運により全(まった)きを得ても、かれらの愛情がかつて減することのなかった朋友・知己・仲間・親族が災禍(さいか)に陥(おちい)り、それによってその災禍がまたかれらの災厄(さいやく)となるということであった。これは、すべての人々の蒙(こうむ)る運命であったし、また神々に愛せられたる王が悲痛と感じたことであった。

(A) 自分は悪いことをしたと言い、悔恨の情を表明しています。

こうした悔恨の情を表明した王が、人類史上いたでしょうか。

帝王の詔勅はどこの国にもありますが、皆戦いに勝ったとか、領地を獲得したようなことばかりほめ讃(たた)えています。

ところが、アショーカ王は、戦いには勝ったけれども、自分は悪いことをしたと言って、深く悔いているのです。

(B) だったら、思いとどまればいいのに。

続きです。

そうしてヨーナ人の間を除いては、これらのバラモンたちおよび修行者たちの仲間の住していない地方は存在しない。

またいかなる地方においても人々がいずれか一つの宗教を信仰していないような地方は存在しない。

故にカリンカ国が領有されときに人民の殺され死に移送された数のうちの百分の一でも、あるいは千分の一でも、それについて神々に愛せられたる王はいま心に痛ましく感じるからである。

(A) ヨーナ人とはギリシャ人のことです。ギリシャの中でもイオーニアの人が海路をあちこちに出かけていたので、イオーニア人が一番よく知られていました。

古称はイヤオーナスで、それがインドで転化して、ヤヴァナと言い、それが縮約されてヨーナと呼ばれました。

人々を殺し、尊い修行者をも殺したと言って悔いているのです。

(B) だったら思いとどまればよかったのに。

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追記: 2024/04/21 13:18
〜訂正内容〜

本文を加筆・訂正しました。