おぶなより

世界平和の祈りに寄せて

403_法悟28-18-1

第 3 週 賢者の道を歩む

4 忙しい人の正体は怠け者

以前は怠る者であっても、
(それに気づき)怠らない人間になるならば、
その人はあたかも雲を離れた月のように
世を照らす。

(一七二) (第13章 世の中 より)

また、適当にいきます。

怠け者と聞くと、何もせずにボケッとしている人を想像しがちだ。しかし、実際には、怠け者は忙しいのである。何もせずにお菓子ばかり食べている人が、さて、掃除でもやるか、と思っても一向にやらない。

なぜか。ただ頭で「毎日掃除しなくてもいいだろ、他にやるべきことがあるかもしれないし」などと考えて時間がなくなって結果的に忙しくなる。それで色々な仕事をやり残す。だから、忙しい人の正体は怠け者なのだ。

子育てに失敗すると、決まって親は言う。「もっと小さい時に遊んであげればよかった。でも、仕事が忙しかったから・・・」。

しかし、その時に子供と遊んでやることが、親にとしてやらなければならない仕事だったのだ。忙しかったから・・・と言い訳をしても、子育てを怠けていたことには変わりはない。

仕事に忙殺されている人は、その他のことがおろそかになっても言い訳はしない。

例えば、締め切り前のライターの部屋は散らかり放題かもしれないが、忙しいから掃除ができなかったなどと情けない言い訳はしない。奥さんには怒鳴られるかもしれないが、真剣に仕事に打ち込んでいれば、そんなセリフは出てこないハズだ。

掃除をしたら原稿の締め切りが間に合わなくなるのだから、掃除は今やるべき仕事にはならないのだ。たとえ部屋が汚れていても、イライラしたり、嫌な気分になることはない。

締め切りにも間に合わず、部屋片付けもできないで、周囲に当たり散らす。どっちもできずじまい。そういう人を怠け者というのだ。

大事なことは、時間を無駄にしないことだ。仕事以外にも、掃除、洗濯、食事の準備など、 1 分単位でテキパキとこなしていけば、普通の人の何倍もの仕事をこなせる(?)。

掃除や食事の準備のために奥さんをもらうという発想の人は、ハッキリ言って怠け者だ。客観的に見て(?)、これはどうしても時間の都合がつかないから、人手を借りようとする場合なら怠け者ではない。

ブッダ(お釈迦さんのこと)は、「怠けている人は物凄く忙しく振る舞う」としている。

怠けない人は冷静に淡々と、やるべきことをしっかりこなしていく。周囲から文句を言われても、焦って走り回ることはしない。

この偈(げ。詩文。この経文のこと)にまつわる物語を紹介しよう。

あるお寺でお坊さんが、朝昼夜と掃除をしていた。寺には長老がいる。長老は毎日早朝のお勤めを終え、朝食を済ませた後は、 1 日中ずっと瞑想をしている。長老はすでに悟りを得ていた。あるお坊さんの方は、朝から寝るまでお寺中を隅々まで一生懸命、きれいに磨きあげていた。それだけに、彼は長老が食事だけをして、座ってばかりいるだけのように思えて不満をつのらせ、長老に言った。

「長老様は信者さんから布施(食事)を頂いているのに何もしないではないか」と。

これに対して長老は答えて、怠けることの本当の意味を語り始めたのである。

「自分の仕事を一生懸命やるべきなのです。一体、あなたは掃除をするために出家したのですか。解脱するためではないのですか。あなたは仕事をしていると思っているかもしれませんが、本当は怠けているのです。あなたは 1 分さえも休んでいないからといって、自分は頑張っているなどと勘違いをしてはいけません。あなたは相当な怠け者ですよ」

彼は長老の言葉にハタと気づいた。

「俗世間では朝から晩まで掃除をしていれば、よく頑張るお坊さんだと評価されても、仏教の教えに照らせば、それは相当な怠け者だ。今まで本来やるべき仕事をしていなかったのだから・・・」

それからは、彼は朝早くだけ掃除をして、あとはひたすら瞑想の修行に打ち込むようになった。そして、ついに悟りを開いた時には、お寺のあちこちが汚れていた。

事情を知らない他の人々から「どうして掃除をしないのですか。以前と違って随分お寺が汚れていますよ」と言われた時に、「ああ、昔は怠けていたので、よく掃除をしました」と答えたそうだ。

何もかもやろうとするのは、ただ智慧がないだけのことだ。何もかもやろうとするのではなく、自分の本業をしっかりとやり遂げること。それで他のことがおろそかになっても構わないのである。怠け者に限って、何もかもやりたがるやりたがるものだ。

もう1 度、ブッダの教えを思い出そう。怠けるという言葉の本当の意味は何か。それは、「やるべき時にやるべきことをやらないことだ」ということを。

とのこと。

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追記: 2021/06/05 00:01 〜訂正内容〜

本文を訂正しました。