第 5 章 やりたいことが見つからない
82.惹かれてはいけないもの
下劣な仕方に馴染むな。
怠けて人々とともにふわふわと暮らすな。
邪(よこしま)な見解を抱くな。
世俗のわずらいを増やすな。
(ウダーナヴァルガ)
今回は、初期の仏教経典ではあるが、
ダンマパダ(法句経)ではなく、
ウダーナヴァルガ(感興のことば)になる。
もしかしたら、これははじめてご覧になるか、あまり馴染みのない方もいらっしゃるかもしれないので、ほんのちょっと中村さんの解説を引用しておきます(改変あり。細かくウダーナヴァルガの位置づけを説明するとちょっと面倒なので、普通は以下の内容で十分ではないかと思う)。
ウダーナとは日本の現代の学者は「感興語」と訳すことが多いが、ブッダが感興(*1)を催(もよお)した結果、自ずから表明された言葉であるとされている。
「無問自説(*2)」と訳す学者もある。
漢字にはなかなか訳しにくいので、難しい漢字で音写されていることが多い。(*3)
ヴァルガとは集まりを意味する。
(*1)感興~かんきょう~興味を感じること。面白がること。また、その興味。面白み。
(用例)感興を誘う。感興がそがれる。
(*2)むもんじせつ。問われないのにブッダが自ら説いたという意味合い。
問わず語りの高邁なお釈迦さん版といったところか。
(*2)中村さんの本には目の回りそうな難しい漢字名称のものが 10 個ほど出ている。とても引用できないし、その意義もないと思うので省略する。
佐々木さんは、
怠けて人々とふわふわと暮らすな、
のくだりを、
放逸になるな、
と訳している。(*4)
(*4)放逸~ほういつ~勝手気ままでだらしないこと。また、そのさま。
(用例)生活が放逸に流れる。
さらに、
世俗のわずらいを増やすな、
については、
世俗の富や栄えを求めるな、
としている。
佐々木さんによると、これは出家をせず、俗世間で生きるにしても、正しい生き方があると語った句(経文)だそうだ。
下劣な仕方とは、悪い習慣のこと。
一つだけ言うと、もしも、佐々木さんの訳のように、世俗のわずらいを富や栄えととらえるなら、稼ぎがあっても、転輪聖王のような人ならいいんじゃないの?(*5)
まあ、そんな人は、滅多にいないのかもしれないけど。
(*5)転輪聖王(てんりんじょうおう、転輪王ともいう)は古代インドの思想における理想的な王を指す概念。
地上をダルマ(法)によって統治し、王に求められる全ての条件を備える。
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追記: 2021/09/25 00:06 〜訂正内容〜
誤記を訂正しました。