第一章 誕生と求道 ー「スッタニパータ」(1)
一 「スッタニパータ」について
これは、仏典の中でも最も古く、お釈迦さんの思想や当時の人々の生活を伝えているものです。
スッタニパータは、元は別々の経典として五章にわかれていたものを、一つにまとめたものです。
スッタは経典、ニパータは集成の意味です。(*1)
スッタ←経典
ニパータ←集成
ここでは、素朴な最初期の仏教が示されています。大規模な僧院(精舎)での生活はまだで、修行者たちは樹下岩上に座して、洞窟で瞑想する簡素な生活を楽しんでいました。(*2)
修行者(比丘)は世を厭(いと)うて、人のいない(座)所や樹木や墓地を愛し、山間の洞窟の中におり、または種々の座所のうちにいるのであるが、そこにはどんなに恐ろしいことがあるのだろう。
修行者は音のしないところに坐臥していても、それらを恐れて震えてはならない。(*3)
「スッタニパータ」九五八ー九五九
当時は、墓石もなく、人の亡骸は森の中に投げ捨てたままでした。腐乱してもそのままで、鳥の餌にもなっていたようです。
そんな環境で、修行をして精神統一をする当時の修行者には、大変な覚悟が求められた訳です。
この経典では、お釈迦さんは、あくまでもすぐれた一人の修行者であり、新たな宗教の開祖たる意識はない形で描かれています。(*4)
彼が歴史上の人物であり、素朴な描写からも、その様子が歴史上の事実として、偲ばれる所以です。(*5)
中村さんは、彼はどこまでも諸々の宗教に通じる真の道を明らかにしたつもりだった、とお書きになっています。
以下、お釈迦さんの生涯に関する三つのパッセージを取り出して伝えたい、とお書きになっています。(*6)
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(*1)・集成~しゅうせい~多くのものを集めて一つにまとめあげること。また、そのもの。集大成。
(*2)・樹下~じゅか~樹木の下。
・樹下石上~じゅかせきじょう~修行僧が露宿する木の下や石の上。出家の境涯のたとえ。じゅげせきじょうとも読む。
・露宿~ろしゅく~戸外に宿ること。野宿。
・境涯~きょうがい~この世に生きていく上でその人が置かれている立場・環境。身の上。境遇。
・岩上~これは、例によって、国語辞典にも、漢和辞典にも出ていません。
従って、樹下石上が一般的に用いられると考えられます。
(*3)厭う~いとう~①いやだと思って避ける。いやがる。
(用例)世を厭う。労を厭わない。
②いたわる。大事にする。
(用例)寒さの折から、お体をお厭いください。
・比丘~びく~仏教語で、出家して一定の戒を受けた男子。僧。
なお、女子は、比丘尼(びくに)。
・坐臥~ざが~すわること寝ること。日常生活。
・行住坐臥~ぎょうじゅうざが~ふだんの立ち居振る舞い。
(*4)中村さんは、釈迦が新たな宗教を開創したという意識はない、とお書きになっています。
・開創~かいそうでしょうか?
これも、またまた、例によって、国語辞典にも漢和辞典にも出ていません。
(*5)偲ぶ~しのぶ~①遠く離れている人や昔のことなどをなつかしく思う。恋い慕う。
(用例)亡き母を偲ぶ。
②心ひかれて慕わしく思う。
(用例)人柄が偲ばれる。
ここでは、②の意。
・所以~ゆえん~理由。いわれ。わけ。根拠。
(参考)語源は、漢文訓読語の「ゆえ(故)になり」、または、ゆえなりの音便形「ゆえんなり」からできた語。
(*6)パッセージ( passage )~文章や談話の句・節。音楽の楽曲の節。
passage パッサージ(フランス語)とも言う。
しかし。
学術的に意義があるのか、高度な意義があるのか知らないか、パッセージなんて(多分)初めて聞いたよ(忘れているのかもしれないが)。
耳慣れない言葉だなあ。
しゃれているのか、高等なのかは知らないが、私のような教養不足の人間には、わざわざこのような言葉を使う意味がわからない。
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①追記: 2020/10/31 06:26
②追記: 2024/04/09 23:35
〜訂正内容〜
上記複数回にわたり、本文を加筆・訂正しました。