おぶなより

世界平和の祈りに寄せて

183_原仏11ー 5

前回 ( 182_原仏11ー4 - おぶなより ) の続きです。

次は、アンバパーリーさんの告白です。

彼女は元遊女です。

今まで見てきた、

釈尊の生涯 の、

序章 原始仏典へのいとぐち の、

第三章 最後の旅ー 「大パリニッバーナ経」の、

二 最後の旅路

に出てきました。

お釈迦さんを歓待した、あのアンバパーリーさんです。

インドの代表的美女と伝えられているそうですから、さぞかし、見目麗しい女性だったのでしょう。

彼女の加齢を重ねた末の容貌の衰えの嘆き、哀(かな)しみが、切々と綴られていますが、そこに、対比の形で形容されている元々の容貌は、これ以上もないほどに、美しく装飾されているものであるからです。

以下です(段落分けなどの改変あり)。

(昔は)わたくしの毛髪は、漆黒で、蜜蜂の色に似ていて、毛の尖端は縮れていました。
しかし、いまは老いのために、毛髪は麻の表皮のようになりました。
真理を語るかた(ブッダ)のことばに、誤りはありません。

(二五二)

髪の毛の先端が縮れていることが美人のしるしだったそうです。仏像も螺髪といわれ、毛が縮れています。

(かつて)わたくしの頭は、芳香あるこばこのように香りがしみこみ、花で覆い飾られていました。
しかし、いまは老いのために、それは兎(うさぎ)の毛のような臭いがします。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

(二五三)

よく植えつけられてよく茂った林のように、(わたくしの頭は)櫛(くし)やピンで髪を整え美しく飾られていましたが、いまでは、老いのために、そのあちこちが薄くなって禿げています。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

黄金に飾られ、芳香あり柔らかな黒髪は、見事に束ねられて美しかったのですが、いまでは老いのために、その頭髪は脱(ぬ)け落ちました。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

かつて、わたくしの眉毛は、画家が描いた素晴らしい画のように美しかったのですが、いまでは老いのために、皺(しわ)がより、たれさがってしまいました。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

わたくしの眼は、宝石のように光り輝き、黒い紺色で、細く長かったのですが、いまでは老いのために害(そこ)なわれて、美しくありません。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

若き青春の頃には、わたくしの鼻は、柔軟な峰のように、美しかったのですが、いまでは老いのために、干からびたようになっています。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

(二五四 ー 二五八)

わたくしの耳朶(みみたぶ)は、以前には、よく作られよく仕上げられた腕輪のように、美しかったのですが、いまでは老いのために皺がより、たれさがっています。
真理を語るかたのことばに誤りは、誤りはありません。

わたくしの歯は、あたかも芭蕉の新芽の色のように、以前は美しかったのですが、いまでは老いのために、それらは砕けて、(あるいは)麦のように黄ばんでいます。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

森のなかの茂みを飛び回るコーキラ鳥のように、わたくしは甘美な声を出していましたが、いまでは老いのために、それは、あちこちでと切れます。
真理を語るかたのことばに、誤りはありません。

(二五九 ー 二六一)

彼女も出家して、お釈迦さんの弟子になっています。

それにしても。

これらの言葉を読んでいると、女の人は、本当にご自分の容姿に敏感だし、深いこだわりを持つものだな、とひしひしと感じられる気がします。

洋の東西を問わないんでしょうね。

人間誰しもそうなのでしょうが、ある程度のナルシスト(自己陶酔型の人。うぬぼれやさん)の傾向はありますが、ここまで訴求されると、やはり、女の人は、容姿にこだわる強い傾向があるのだな、と改めて思わざるを得ないからです。(*)

美しかったがゆえに、その分、執着が多いのかもしれませんが、それにしても多岐にわたっていますね。

しかし、残念ながら諸行無常で、誰しも長い時間とともに変わらざるを得ないといったところでしょうか。

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・歓待~かんたい~喜んでもてなすこと。手厚いもてなし。
(用例)客を歓待する。

・見目麗しい~みめうるわしい~顔立ちが美しい。美貌である。

・容貌~ようぼう~顔かたち。みめかたち。
(用例)容貌魁偉

・魁偉~かいい~顔がいかめしく、体が大きくてたくましいこと。また、そのさま。

・漆黒~しっこく~漆(うるし)を塗ったように真っ黒でつやのあること。また、その色。
(用例)漆黒の闇。漆黒の髪。

・尖端~せんたん~先端。①とがったものの先。
(用例)錐(きり)の先端。
②(転じて)時代や流行のさきがけ。
(用例)流行の先端を行く。

螺髪~らはつ~中村さんによると、毛が縮れていることを指すそうです。

・干からびる~ひからびる~すっかり水分がなくなる。

芭蕉~ばしょう~バショウ科の多年草。中国原産。庭園などに栽植。

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(*)ナルシスト傾向は、誰にでもあるものだと個人的には考えています。

ですから、当然、性別も問いません。

女の人にこの傾向はもちろん間違いなくある、しかも、かなり強くある、と考えます。

ですが、男の人にもこうした傾向は間違いなくあるのです。

そうしたナルシストさんを時々見かけるからです。

これは、何も容貌に優れた人ばかりとは限りません。

私は公衆の男子トイレで、鏡に見入る男性を何人も何人も見てきました。

数えきれないほど。

比較的若い男性に多かったですけどね。

しかも、容貌的がそんなに・・・、とは思えない人をです。

従って、表面にはあまり出さずとも、誰にもこのような傾向はあるものだ、と考えられます。

ナルシストだ、と。

ちなみに、私の場合は、そうした場面に遭遇した時は、見て見ぬふりをして、そそくさと立ち去るようにしています。

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①追記: 2024/04/13 19:13
②追記: 2024/04/13 19:15
〜訂正内容〜

上記複数回にわたり、本文を加筆・訂正しました。