Ⅱ 人生の指針
第一部 人生の指針
第一章 ブッダのことばー「スッタニパータ」 (2)
ここからになります。
その前に、勝手ながらちょっと前置きをいくつか書かせて頂きます。
私は、自分の決定的な能力不足より、内容の理解が十分にできないという理由のためではありますが、大乗仏教にわずかなりとも懐疑を抱き、そして今度は原始仏教の経典にまで、また同様に懐疑を抱くことになるとは、思ってもみませんでした。
通読した時は、多少引っ掛かっても、強引に読み飛ばしましたが、やはり、ゆっくり見ていくと、そうもいかない感じなのです。
2500 年以上と、あまりにも年代と時代状況が離れていること、外国語の翻訳をいくつも通していること、そのために、簡潔すぎる表現では、事実を把握しきれず、完全な読み取りができないところが、いくつも出てきてしまったため、だとは思いますが。
もちろん、素直に書かれていることを信じる、善意を信じて通し切るのも素晴らしいことなのかもしれませんが、やはり、五感にまつわる欲にこだわる肉体人間のすることです。
残されたものには、当時の力のある、権威のある人達による手が加えられ、編纂されたものである可能性があること、そして、残念ながら、人間はその自己保存をはかる習性から、本音をなかなか出さないきらいがあること、を踏まえる必要があると思うのです。(*1)
私があまりにも細々と疑うために、読まれた方には、不快感を抱かれた方が、多々おられるかもしれません。
その点は、本当に申し訳なく思っております。
例えば、( 176_原仏10ー7 - おぶなより ) で、チュンダがささげた食べ物で、釈迦が食あたりをおこして、病気になる話を出しました。これについては、チュンダをチェンダと書き間違えて、大変なご迷惑をおかけしました。この場をお借りして、再度、お詫び申し上げます。
それで、あれは、お釈迦さんが、チュンダが食べ物を施してくれたから、それだけでも本当にありがたい、とそのこと自体を、ただひたすらにどこまでも感謝した、と解釈するのが、宗教家の道、中村さんのような善良なる学者さんの道なのかもしれません。
しかし、お釈迦さんがなぜ、チュンダの供養してくれた食べ物、それも死に至る可能性のある食べ物を、もっとも功徳のあるものだ、とわざわざ強調したのか?
ここには、お釈迦さんの人に対する暖かい思いやり、読みの深さ、頭の良さが現れていると思うのです。
彼は、自分がこの食あたりが原因で亡くなることは十分に予測できた(あるいは事前にわかっていた)。
もしも、そうなると、チュンダはどうなるか?
チュンダのまわりの人々をはじめ、お釈迦さんを慕い、帰依する人々の怒りを買い、責め立てられ、大変なことになるかもしれない(いくら仏教に帰依していたとしても)。
そして、チュンダ自身も、自らを責め苛(さいな)み、つらい思いをさせることになる。
自分がこの世を去った後も、チュンダを守らなければならない。
お釈迦さんはそう考えたのではないでしょうか?
だから、自分の権威(ちょっと不適切かもしれませんが、他に適当な表現が見つからなかったので)で、みんなのチュンダへの攻撃や反発を、あらかじめ、抑えておく。
そして、チュンダを含め、みんなに、次第に、時間を経ることで、すべての成り行きは、自然なもので、定めである、と悟らせてゆく。
こうした、対処があのような形にあらわれていると思うんですよ。
だから、彼は非常に思いやり深く、聡明な人だと思うんですよね。
ここでも、やはり、お釈迦さんの人としての、宗教家としての思慮深さ、暖かさが、あらわれていると思うのです。
だから、女性についても、厳しい評価をいろいろとしていますが、男性の信者を惑わせないために、あえてそうしていたのではないかな、と思うんですよ。(*2)
多少は、女性の自己中心的なものの見方、自意識の高さも考慮に入れて。
そして、あえてご自分を悪者にして。
彼は、法力はもちろんあるけれど、五感にまつわる欲に流されやすい、世知辛いこの世のあり方に即した、現実的な対処も併用していたように思えるんです。(*3)
まあ、以上のような見方でこれからもやっていくつもりなので、( 171_お断り3 - おぶなより ) で書いたように、善意一辺倒押しのものの見方と悪意一辺倒押しのものの見方(肉体人間としての自己を中心とした、冷酷なまでの利害得失計算を徹底させるものの見方)を併用するやり方を続けるつもりです。
この点を、あらかじめご了承頂きたく、お願い申し上げます。
なお、このチュンダの話に関しては、もう一つ書きたいことがあるので、次回をそれに当てさせて下さい。
お願い致します。
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(*1)・編纂~へんさん~一定の方針のもとに、集めた材料を整理して書物を作ること。
(*2)彼は、女性に対して言葉では厳しいことは言っていても、帰依してくる女性を大切にしていますからね。
彼の口先と行動は違います。
ですから、心(本音)は、行動にありますね。
強いて、彼が女性にとったまずい点をあげれば、出家のために(経済生活に目処をつけたとはいえ)家庭(奥さんと子供)を捨ててしまったことでしょうか。
(*3)・法力~ほうりき~①仏法の功徳の力。
②仏道修行によって得られた超人的な力。
・仏法~ぶっぽう~仏教。仏の教え。
・仏道~仏の説いた道。仏教。
・世知辛い~せちがらい~①人情が薄く暮らしにくい。
②打算的で抜け目がない。打算的でお金に細かい。
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①追記: 2020/12/01 12:27
②追記: 2024/04/13 20:39
③追記: 2024/04/13 20:41
〜訂正内容〜
上記複数回にわたり、本文を加筆・訂正しました。